ウェディングベル
横取り
設計図が出来てから、古屋千秋は前以上に船へと時間を注ぐようになった。
私が海へと誘っても、断ることが多くなって、私は食事を持っていっても直ぐに小屋を追い出されるようになった。
「今が頑張り時なのよ」
そういって姉は家の窓から見える明かりのついた木造の小屋を眺めては小さく笑っていた。
「私も何か手伝えないかなぁ」
「千秋さんに聞いてきたら?」
「『大丈夫だから静かにしてて』」
「……言われたの?」
私は小さく頷いた。
今、古屋千秋は船に使う木材を注文したり、自分で調達して、必要な大きさに切り落としたりしている。
簡単に見えてこの作業は船の全てを担う重要な役割で、私なんかが下手をすればその船は沈んでしまう事になる。
だから古屋千秋は私に触らせたりはしないのだ。
私は図工が嫌いだから。上手く木を切り落とすことなんて出来ない。
暫く小屋の出入りを絶って、古屋千秋が休憩している所に、コーヒーやご飯を持って行ってあげよう。
そう思っていた。