ウェディングベル
「玲は器用だからなぁ…俺より切るの上手いかもな。でも、力仕事だからなぁ…」
「塗料を塗るくらいなら出来ると思うわ、きっと」
「じゃあ、それをお願いしようかな。向こうに置いてるのが出来上がったヤツだから」
そういって指差したのは私のいるドア付近で、私は咄嗟に自分に気付かれるのではないかと思って急いでドアから離れた。
気づかれた所で、別に困ることはないはずなのだが、それでも二人の居る場所に私は居たくなかった。
それよりも、私には何も頼まなかったのに、姉には仕事を頼む古屋千秋に私は怒りを覚えた。
そしてそれ以上に、姉に嫉妬せずにはいられなかった。
私が手伝えなかったことを知っているのにそんな話を持ち掛けて、運良く仕事を仰せつかった、姉が憎くて仕方が無い。
あいつはまた私のものを奪っていく。
どこまで盗んでいけば、どこまで私を劣等感に苛めば気が済むというのだろうか。
私は震える手でお盆を握り締めたまま、暫く小屋の傍を離れなかった。
時折聞こえる、笑い声。
憎たらしい、声。