ウェディングベル
そんなことがあって、その次の日から私と入れ替わるように、姉があの小屋へ入り浸るようになった。
私はいつも尽く姉に先を越されて、惨めに冷めていくコーヒーを流し台に流す日々が続いた。
お前はどの男だって選べる。
お前が声を掛ければ誰でも振り返って猫撫で声を出し、お前の望みを叶えてくれる。
高価な服もバッグも、誰一人惜しげもなくお前に与えてくれるだろうし、靴の底さえも舐めてくれる。誰もそれを厭わないだろう。
なのに、どうしてあの古屋千秋じゃないといけないの。
どうしてお前はあの人を選ぼうとするの。
何でも持ってるくせに。
「そんなに私を貶めて、楽しい…?」
私はマグカップを思い切り床に叩き付けた。
これがアイツならどんなにいいか。
このマグカップのように粉々に砕けて心も身体もバラバラになって、見るも無残な形に成り下がってしまえばいいのに。
私の心の中にどす黒い濁流が、静かに、それでも地響きを立てて迫る津波のように押し寄せていた。
生まれたときから何でも持っている、憎い女。
生まれたときから何でも出来た、憎い女。