ウェディングベル

その言葉は私の中で残酷に鳴り響いた。


私が鐘ならば、その言葉は鐘を鳴らす鉄の塊。私を殴りつけては歪な音を響かせる、残酷な楽器だ。


その言葉はどういう意味。


私は無意識に問いかけていた。



「玲姉のこと、誘ったの？」



「ん？あぁ、船作ってくれるの手伝ってくれたし、韓国語が出来るって言うから、それならちょっと迷子になっても平気だろって思ってな」



もう少しで私は崖から飛び降りて５ｍ下のコンクリートで全身を強かに打っていたことだろう。


落ちる間際、古屋千秋に残酷な言葉を吐いて、その顔に一生の「罪」を刻みつけられるほどの一言を。


それでも私は何も言わず何の行動も起こさなかった。


いっそ船なんて潰れてしまえば良いと、船に対する情熱なんて欠片も持ち合わせちゃ居ない私は平然とした顔でそう呪詛のように心の中で吐き続けた。