ウェディングベル
目に見えてわかる私の不機嫌に気付いたのだろう、古屋千秋はどうにか私の機嫌を直そうと必死に言葉を紡ぎだした。
「大丈夫だって、美里もすぐ連れてってやるからさ」
「もういいよ、行かない」
連れて行ってなんてほしくない。
他の女を乗せた船で、他の女とは劣る場所へ連れて行かれるなんて、私はそこまで子供じゃない。
駄々ではなく、諦めだった。
愛情よりも憎しみが、愛しさよりも殺意が、悲しさよりも惨めさが、私の中に降り積もっていく。
あぁ、人間の感情と言う物はこうも簡単にあっけなく変わってしまう物なのかと、私はまるで、自分の映画を客席でポップコーンを片手に眺めているような気分で居た。
「怒ってんのか?」
困ったように、古屋千秋は尋ねる。
私は首を振って答える。
「許せないだけ」