続・政略結婚は純愛のように
 口づけが嫌なのではなく、このまま何もわからなくなるのが怖くて由梨は身動ぎするけれど、隆之の右手は由梨の頭を固定し、左腕は腰に巻きついて少しも動けない。
 ただひたすらに隆之の口づけを受け続けた。
 そしてようやく解放された時には、由梨の体はベッドに横たえられていた。
 その上に、隆之がのしかかる。

「あっ…!隆之さん…、だ、ダメ!」

隆之が由梨のスーツに手をかけるのを由梨は信じられない思いで止める。

「由梨…由梨、だれにもやらない。」

隆之は鋭い瞳で由梨を睨む。
 そして由梨の体を弄り始める。

「俺のものだ。ずっと、永遠に。由梨がそう望んだんだろう。」

いつもの隆之らしくない性急な動きで追い詰めるように大きな手が由梨のスーツを脱がせ始める。
 耳に直接怒りのことばを囁きながら。
 由梨は、まってやめてと口では言いながらされるがままだった。
 身体がだるくて力が入らない。
 頭がぼんやりと霞んでゆく。
 もはやどうにでもなれという気持ちで由梨は目を閉じた。
 目の裏の闇がぐるぐると回るような感じがして気持ち悪かった。
 その時、シャツの中に手を這わせて由梨の素肌に触れた隆之がハッとして手を止めた。
 そしてベッドに身体を預けたまま呼吸を乱している由梨の額に手を当てた。

「由梨、…熱があるんじゃないか?」
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