続・政略結婚は純愛のように
給湯室で
「つーめた!ダメだわ、こりゃ!」

企画課の給湯室で会議の終わりに出席者みんなのカップを洗っている由梨の隣で声をあげたのは二課の女性社員の山辺だ。
 会議後のカップを洗うのはアシスタントの仕事だが、今日は一課二課合同の会議だったため洗い物が沢山あるだろうと手伝いにきてくれた。
 けれどあいにく今日は朝から給湯器の調子が悪くお湯が出ない。
 修理業者が来るのは午後だから、仕方なく由梨は水のまま洗い物をしていたのだ。

「今井さん、冷たいからいいよあとで。午後に業者が来てからやれば。」

山辺は手をハンカチで拭きながらいう。

「…でも、もう半分くらいやっちゃいましたから。それに、午後までに皆さんがまたお茶を飲みたくなったら困るかなぁって。」

「…真面目ねぇ、今井さん。」

山辺はやれやれという様子でため息をついて再び流しに手を入れた。

「山辺さん、いいです。私やります。」

「いいの、いいの。二人でやったら早いもんね。…今井さんって家でも家事はするの?」

 山辺は少し遠慮がちに由梨に問いかける。
 新婚である由梨に家事をするのかというのは随分な問いかけのようでもあるが、由梨の相手が隆之で家には当然家政婦がいるだろうということを考えると仕方がないだろう。
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