続・政略結婚は純愛のように
 由梨は少し考えてから答える。

「料理はお手伝いさんが月水金曜日に作ってくれます。それ以外は私が。掃除は…たかゆ…夫婦のプライベートスペースは私が…それ以外の客間などはお願いしています…。」

危うく隆之さんと口走りそうになって、なんだかしどろもどろになりながら由梨は答える。
 山辺はヘェ~と言いながらニヤニヤとして由梨を見た。

「社長のお屋敷なんて相当広いだろうから、掃除はやってもらうしかなさそうね、まさか社長に家事分担をお願いするわけにもいかないしねぇ。…ふふふ。」

山辺は自分の言ったことに吹き出して笑った。

「でも、すごく意外だったわ。あなたと社長、ちゃんと夫婦なのね。」

「え…?」

「なんだか社長ってイケメンすぎる上に中身もスーパーマンみたいでちょっと人間味がないというか…。もちろんそこがいいって言う子もいるんだけど。私はなんかなぁって思ってたのよね。結婚もさ、言葉は悪いけど財閥のご令嬢とだなんて、出来過ぎじゃない?って。」

山辺は隆之よりも年上で結婚して子供もいる。
 そういう層から見るとそんなふうに見えるのかと由梨は少し新鮮な気持ちで山辺の話を聞いていた。

「それで、今井さんが異動でうちにきたときはちょっとどうなるの?って思ったのよ。二課は黒瀬主任が厳しくてアシスタントが続かないことは社長も知っているはずなのに。」

山辺はそこまで言って泡の付いた手を止めて、また笑った。

「そしたら今井さんがあまりに意外なキャラクターで。ふふふ。」

「え?山辺さん、私そんなに変ですか?」

山辺は由梨の問いかけには答えずに笑いながら言葉を続ける。
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