続・政略結婚は純愛のように
「そういう意味なら、社長だってずいぶんやっかまれたんじゃないかしら。…男性社員から。」

「社長が…?」

「そうよ。今井さん貴方結婚前になんで呼ばれてたか知ってる?"秘書室の天使"よ。…とくに営業部の男たちの中で。」

「は?」

由梨は間抜けな声を出して固まってしまう。
 社内では、影のあだ名をつけられている人が時々いて、いくつかは由梨知っているけれど、まさか自分にもあだ名があるなんて思いもしなかった。

「なんとか繋がりをつけたいって男はいっぱいいたのよ。でもだれも長坂さんの鉄壁の守りを崩せないでいた…。そうこうしてるうちに社長がかっさらっていったもんだから、みんながっかりしたってわけ。社長は初めからそのつもりで今井さんを外に出さなかったんじゃないかって言う人もいるくらいよ。…だって、貴方のその雰囲気なら受付にも向いてそうなのに。」

 由梨は真っ赤になって首を振った。

「そんな…。きっと私の実家がうるさく言ったんです。社長はそんなつもりは…。」

「でも、そう言いたくなるくらい残念に思った男たちがいたのは間違いないわ。ね、これでおあいこよ。」

明るく笑う山辺の言葉に由梨はなんだか恐れ多い話だと思ったけれど、少し心の中の重りがなくなっていくような気がした。
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