続・政略結婚は純愛のように

　山辺は難しい顔で頷いた。

「そのはず…だったんだけど。なんだか様子がおかしくて…。ノリスの葉山社長がどうも全て知っているみたいなの。」

「まさか…。」

黒瀬が呟いた。

「それで出店を取りやめにすると…。それで急遽、社長と課長が葉山社長に会いに行ったのよ。」

ミーティングルームが静まり返った。
　ノリスの出店は、ファストファッションが先行するこの地で今後婦人服市場の活性化を見込んだ一大プロジェクトだ。
　失敗すれば会社にとってはそれなりに痛手だ。

「…とにかく、そういうことだから。しばらくこちらは対応に追われると思う。二課に手伝ってもらうこともあるかもしれないから…。」

「わかった。何かあったら遠慮なく言ってくれ。」

黒瀬が頷いた。

「とはいえ、こちらはこちらで物産展の方を滞りなく進めなくてはいけないのだが。…俺も明日から天川と東京へ飛ぶことになっている…。」