続・政略結婚は純愛のように
　黒瀬が眉を寄せた。
　こちらはもともと決められていた出張だが、企画課の課長以下主任が全て不在になるというのは非常事態と言えるかもしれない。
　メンバーの間になんとも言えない不穏な空気が流れた。
　残るメンバーに不足もないし、こちらでできることもない。
　ただ通常どおり業務をこなせばいいだけなのだが、それでも普段とは違う雰囲気が皆を不安にさせる。
　とはいえ二課の出張は黒瀬ありきの予定で、こちらも外すわけにはいかない。

「私が残りましょうか。」

沈黙を破って天川が言った。

「アシスタント時代は一課にいましたし多少のお手伝いはできると思います。黒瀬主任の補佐は…今井さんで大丈夫だと思いますがいかがでしょう？」

　山辺が多少ほっとした顔を見せた。
　天川であればいつでも一課の補佐に入れるというのが事実だからであろう。
　他のメンバーも幾分安堵したように表情を緩ませている。
　二課は黒瀬と天川が厳しいと言われているがだからこそ要のような存在なのだ。
　二人がいないなか、通常業務ならともかく一課のヘルプまでできるだろうかという不安は当然と言える。
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