続・政略結婚は純愛のように
「来ないかと思ったわ。」

そう言って微笑んだマリアは東京へ来てからずっと駆けずり回っていた隆之よりも疲れているように見えた。
 少し照明の落ちた部屋で隆之は彼女と向かい合っている。

「…マリア。」

 隆之は眉を寄せた。
 心から愛しいと思っていたわけではないが一度はいい付き合いをしていると思っていた女性を隆之は複雑な気持ちで見つめる。

「丸大との契約を続行して欲しければ代わりに私を抱きなさいって言ったらどうする。ふふふ。」

どこか投げやりにマリアが言う。
 いつもの自信に満ちた彼女はなりを潜め、ただ疲れたように笑う彼女が痛々しいと隆之は思った。

「…丸大のじいさんが連絡してきてね。二人で貴方に揺さぶりをかけようって言うのよ。じいさんも貴方の結婚が気にくわなかったみたい。私にこう言って貴方を脅せって…ふふふ。」

「だから出店取りやめなんて言ったのか。…俺を東京へ呼ぶために?」

マリアは隆之の質問には答えずに、力なくうなだれた。

「私、本当に貴方のために言ってたのよ。…愛人のこと。」

 隆之は目を細めて彼女を見る。
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