続・政略結婚は純愛のように
「…今井財閥の由梨さんのことは、ずっと前から知っていたの。…祥子から、彼女の従姉妹の今井祥子から聞いていたのよ。すごく暗くて地味で冴えないって…。実際に見たのはこの前が初めてだったけれど。」

隆之は今井家で少し言葉を交わしただけの派手な女性を思い出した。
　そう言えば由梨より自分の方が隆之にふさわしいなどと意味のわからないことを言っていた。

「…貴方は私が知る限り、いつも最上の女と一緒にいた。そんな貴方が地味な子じゃ満足できないだろうって思ったのよ。貴方にはしがらみが多いから結婚も自由にできないのは仕方がないにしてもそれじゃあまりにかわいそうだからって…。」

マリアは寂しそうに微笑む。

「もちろんあの頃から貴方は浮気だけはしなかったから、愛人なんて嫌がるだろうって思ったけど…。でも割り切れることができたら、きっとその方がいいって思うに違いないって。」

マリアの言葉は随分と身勝手で隆之と由梨を馬鹿にした内容だ。
　けれど隆之はもう彼女を責める気にはなれなかった。
　マリアは長い長いため息をついて、ゆっくりと首を振った。

「…違う。違うわ。…本当は…本当は何がなんでも貴方が欲しかったのよ。」

マリアの自慢の明るい色の長い髪がゆらゆらと揺れた。
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