続・政略結婚は純愛のように
「俺は君のその強さと上昇志向に惹かれたんだ。あの頃の俺にはたまらなく刺激的で魅力的だった。…君がそんな葛藤を抱えていたなんて知らなかった。…ごめん、力になれなくて。」

 隆之の胸に顔を埋めたままマリアはしばらく泣いた。
 それはわずかな時間のようでもあり永遠のようにも思える時だった。
 そしてやがてゆっくりと隆之の胸に手をついて離れたマリアは鼻をすすって微笑んだ。

「契約解除は、私からの最後のプレゼントよ。…違約金も振り込んでおいたわ。」

そして、さようならと呟いて隆之に背を向けた。
 夜景を映す大きな窓に浮かぶ背中は、強い女と言われ続けた彼女の面影がないくらいに儚げだった。
 けれど、隆之にできることはもはやない。

「元気で。」

それだけ言って隆之は部屋を去った。
 これが隆之とマリアの本当の別れだった。
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