続・政略結婚は純愛のように
「おかえりなさい。…大丈夫です。明日はお休みですから。」

そう言って微笑むと頭に柔らかいキスが降ってきた。
 少し甘い隆之の香りがふわりと香る。

「ただいま。」

こんな何気ないやりとりが愛おしいと由梨は思う。
 自分にはけして得ることができないと諦めていた愛する人との生活。
 寝室へ行くと、すぐにスーツの上着を脱いだ隆之に抱きすくめられた。

「由梨…。」

 隆之から酒の香りが漂う。
 彼は酒に弱い方ではないが酔うとやたらと由梨とスキンシップを取りたがることに気がついたのは最近のこと。
 今も由梨の名を甘くささやきながら耳を喰んでいる。
 熱い息が耳をくすぐるだけで由梨の背中をぞくぞくと妖しい感触が駆け抜ける。
 そうされると由梨がやがては立っていられなくなるほどに身体を火照らせることを彼は知っているのだ。
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