続・政略結婚は純愛のように
黒瀬と対決
 マリアの部屋を出た隆之は足早にエントランスを目指した。
 マリアの告白に心がかき乱されてじっとしてはいられなかった。
 由梨と出会う前の隆之は、いつもどこか冷静で、冷淡で、沢山の女性と愛を交わしているつもりでいて、本当は誰のこともちゃんとは見ていなかった。
 それを今、見せつけられたような気がする。
 マリアは明るくて快活で、一緒にいて気持ちのいい女性だった。
 自分に自信がある彼女は、隆之に寄ってくる他の女性に無駄に嫉妬したりしなかった。
 それも一緒にいて心地いいと思った要因だ。
 そんな彼女があんな葛藤を抱えていたなんて。
 気がつかなかった。
 いや、気付こうともしなかった。
 隆之はいつも自分のことだけで本当の意味で愛を交わしたいとは思っていなかったから。
 そんな隆之の胸の内をマリアは見透かしていたのだろう。
 だからこそ、その葛藤の片鱗も見せなかったのだ。
 当時のマリアとの別れは突然だったように記憶している。
 テレビでの露出が増えてきた彼女に、所属事務所からスキャンダルは控えるように言われたと相談されたのだ。
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