続・政略結婚は純愛のように
 あまりにもお似合いなマリアと隆之を見て以来、なんだか由梨は自分が隆之に片思いでもしているような気になっていたことに気がついた。
 そうだ私は彼に愛されているのだと、由梨の中のあの弱い自分が顔を上げた。
 ほんの少しの黒瀬の揺さぶりに、普段の彼の冷静さが吹き飛んでしまうほどに。
 愛されている、それをいつも忘れないでと由梨はその弱い自分に言い聞かせた。
 いつだって、何があったって、それだけで大丈夫。
 いつのまにか由梨も背の高い隆之の首にぶら下がるように両手を回していた。
 いつもより乱暴な彼の口づけをもっともっとほしいと由梨の全てが言っている。
 静かなエレベーターの中に二人の荒い息遣いだけが響く。
 そんな時間がしばらく続いて、チンと鳴ってエレベーターが止まった。
 隆之が荒い息のまま一旦口づけ解く。
 そしてあの由梨が大好きな狼の瞳で由梨見たと思うと、やや乱暴に由梨の手を引いてエレベーターを降りた。
 そして由梨とは別のカードキーを見せる。

「別に部屋を取ったんだ。ごめん…今日はもう一瞬も離してやれない。」
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