続・政略結婚は純愛のように
「ん…。たか、ゆきさ…。」

うっとりと彼に身を預けながら、それでも由梨の両手は彼を押し返そうと試みる。
 それがなんの意味もないことを知ってはいるけれど。

「ん?…いやか?」

隆之は優しい声音で由梨に問う。
 けれどその間も熱い息はかかり、唇は由梨の首筋をたどる。
 身体をがっしりと支える両手は怪しく身体を愛撫している。

「や…じゃな…い、ですけれど、隆之さんはお疲れでは…?」

今日の会食の相手は地元の老舗百貨店の会長だった筈だ。
 会社にとっては重要な顧客だが、最近は隆之に対して好意的とは思えない振る舞いがあると蜂須賀が言っているのを聞いたことがある。
 そんな相手との会食はさぞかし疲れただろうと思ったのである。
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