続・政略結婚は純愛のように
「絶対にこっちを見ないでくださいね!!」

ちゃぽんちゃぽんと水音が響く暖かいバスルームで由梨は大きな声を張り上げる。
 先にバスタブに浸かっている隆之は癖のある黒い髪を掻き上げて、呆れたように由梨を見ている。

「何でだ、見ないと意味がないだろう。」

 そんな隆之を睨みながら由梨はタオルで体を隠しつつバスタブにそろりそろりと近寄った。
 少し前に、この部屋に入ってから二人はむさぼりあうように求め合った。
 ドアに寄りかかっての長い長いキスのあと縺れ合うようにベッドに移動して、そのままスーツを脱ぐのももどかしく抱き合った。
 激しく互いを求め合い、ここ数週間のすれ違いを埋めるかのごとく愛し合ったあと、ぐちゃぐちゃになったベッドの上で隆之は声をあげて笑った。

「俺、こんなに余裕ないセックス初めてしたよ!」

その笑顔があまりにもあっけらかんとしたものだったので、思わず由梨も吹き出してしまって、しばらくは一緒になって笑った。
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