続・政略結婚は純愛のように
「…黒瀬がおしえてくれたんだ。由梨が俺との結婚のことで陰口を言われて辛い思いをしてるんじゃないかって。」
由梨はスカイツリーを見つめたまま、彼の話に耳を傾けた。
「あの夜のこと…本当にすまない…。由梨がなぜそのことを俺に言わないのか理解できなかった。言ってくれれば守ってやれるのにってムキになって…あんなこと…。」
由梨は首を振った。
「私も酷いことを言いました。あの日は私、頭の中がぐちゃぐちゃだったんです。その…ま、マリアさんが来て…。」
「マリアが来て…?」
不思議そうに隆之が呟く。
けれどすぐに自身の失言に気がついて口をつぐんだ。
取引先の社長の名を呼び捨てにするなど普通の関係ではありえない。
由梨は振り返った。
そして隆之をじっと見つめた。
「私、知ってたんです。葉山マリアさんが隆之さんの昔の恋人だって。」
「…。」
「だからあの日、エントランスで隆之さんとマリアさんが並んでいるのを見て、すごく…すごく嫉妬してしまったんです。隆之さんには、地味で仕事もまだ一人前じゃない私なんかよりマリアさんの方がお似合いなんじゃないかって…。私と同じように思った人が他にもいて、…黒瀬主任はたまたまそれを私と一緒に聞いてたんです。」
隆之は右手で目元を覆って、天井を仰いだ。
しばらくそうしていたが、由梨に視線を戻すと眉を寄せた。
由梨はスカイツリーを見つめたまま、彼の話に耳を傾けた。
「あの夜のこと…本当にすまない…。由梨がなぜそのことを俺に言わないのか理解できなかった。言ってくれれば守ってやれるのにってムキになって…あんなこと…。」
由梨は首を振った。
「私も酷いことを言いました。あの日は私、頭の中がぐちゃぐちゃだったんです。その…ま、マリアさんが来て…。」
「マリアが来て…?」
不思議そうに隆之が呟く。
けれどすぐに自身の失言に気がついて口をつぐんだ。
取引先の社長の名を呼び捨てにするなど普通の関係ではありえない。
由梨は振り返った。
そして隆之をじっと見つめた。
「私、知ってたんです。葉山マリアさんが隆之さんの昔の恋人だって。」
「…。」
「だからあの日、エントランスで隆之さんとマリアさんが並んでいるのを見て、すごく…すごく嫉妬してしまったんです。隆之さんには、地味で仕事もまだ一人前じゃない私なんかよりマリアさんの方がお似合いなんじゃないかって…。私と同じように思った人が他にもいて、…黒瀬主任はたまたまそれを私と一緒に聞いてたんです。」
隆之は右手で目元を覆って、天井を仰いだ。
しばらくそうしていたが、由梨に視線を戻すと眉を寄せた。