続・政略結婚は純愛のように
「…由梨は知ってたのか。だったら辛かっただろう?ごめん…俺がちゃんと先に話していれば。」

由梨は勢いよく首を振った。
 お湯が揺れてパシャんと音を立てた。

「それで頭がぐちゃぐちゃになって隆之さんに八つ当たりしちゃったけれど、後になってわかったんです。全部私の中の問題だって。」

隆之は静かな眼差しで由梨の話の先を促した。

「隆之さんは立派でみんなに尊敬されていて、私、早く隆之さんに釣り合うようにならなきゃって思ってたんです。私じゃ隆之さんに釣り合わないなんて誰にも言われないように。隆之さんの足を引っ張らないように…。間違った努力をしようとしてた。」

由梨は自分を見つめるアーモンド色の瞳をじっと見つめて軽く息を整えると再び口を開いた。

「…そんな努力しなくていいの。私は隆之さんに…あ、愛されているんだから。」

ただでさえお湯で火照った頬をより一層赤く染めて由梨は言う。

「それだけでいいでしょう?隆之さん。それだけで、私、隆之さんの奥さんでいても…。」

「由梨…。」
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