続・政略結婚は純愛のように
パシャンと水音をたてて隆之が由梨を抱きしめた。

「…そうだ。俺の妻は由梨以外にはあり得ない。俺がこんなにも愛しているのは由梨だけなのだから。」

隆之の胸の中で由梨はゆっくりと瞳を閉じる。

「私がしなくてはいけないのは、隆之さんを信じて、何を言われても堂々としていられるようになる努力だったの…。」

 由梨は呟く。
 自分に言い聞かせるように。
 隆之の抱きしめる腕に力が入った。

「そうだ…、由梨。俺の気持ちは俺にしかわからないだろう?俺は由梨に出会わなければ、結婚自体していなかった。だから由梨以外の者が俺の妻に相応しいなんてことがあるはずがないんだ。…これからも迷ったら、まずは俺に聞くんだ。何度でも言ってやる、俺の妻は由梨以外ありえない。」

 隆之の力強い言葉が、由梨の中に染み渡る。
 今、あの心の中の弱い自分と由梨が一つになったような気がした。
 また弱気になることはあるだろう。
 でも大丈夫。
 由梨には隆之を信じるこの気持ちがある。
< 147 / 182 >

この作品をシェア

pagetop