続・政略結婚は純愛のように
忘年会のお知らせ
「…今年の忘年会は総務課と一緒かぁ。」

隣の席でサンドウィッチにかぶりつきながらぼやくように言った天川の言葉に由梨はお弁当を食べていた箸を止めた。
 お昼休みの企画二課である。
 由梨が東京出張から帰って来てからさらに1週間が経った。
 葉山マリア逮捕のニュースは2、3日世間を騒がせたあと、他の芸能人の熱愛報道にかき消されるようにテレビでは見なくなった。
 隆之はあれからまだ東京から帰って来られていない。
 被害は最小限とはいうものの軌道修正はそう容易なことではない。
 毎日、蜂須賀と共に東京を駆けずり回っているようだ。
 けれど彼がノリスとの契約白紙による損失を埋めようと奔走した結果なんとか代替店舗との交渉がうまくいきそうだということは一課を通じて伝わってきた。
 隆之と由梨はあのホテルでの夜以来会えてはいないけれど携帯の方にはまめに連絡があった。

「…言葉が足らなくてすれ違うのはもう沢山だ。」

そう言って一日に一回は言葉で愛を伝える隆之の行動は由梨にもまた大きく影響した。
 側にいられなくて寂しいという気持ちが完全にではないけれど慰められている。

「今井さんも出るんだよね、忘年会。」

天川は社内メールを睨みながら由梨に尋ねる。
 北部支会社の忘年会は、二つの課が合同で行われるのが慣例となっている。
 同じ課の人間と一年の業務を互いに労いつつ、普段は交流のない他の課の人間と親睦を深める…というよく分からない理由だ。
 どの課とどの課が合同になるのかは大抵このくらいの時期に人事からメールで知らされる。
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