続・政略結婚は純愛のように
「…出ると思うよ。」

由梨は迷いながらも答える。
 昨年は父が亡くなってすぐだったから出られなかった。
 それより前の年は父が祖父に許可を得て出席していた。
 隆之は由梨が忘年会へ行くことに何か言うとは思えないけれど、信じられないくらい多忙な日々を送る彼に申し訳ないという気持ちにもなった。

「おっ、忘年会のメールきたのね。」

張りのある声が聞こえて振り向くと山辺がコーヒーを持って立っている。
 メールを覗き込んだ山辺は天川と同じように、今年は総務課かぁ、と眉を寄せた。

「…総務課だと困るんですか?」

由梨は不思議に思って尋ねる。
 秘書課時代の忘年会は総務課とばかりだったように記憶している。
 総務課は受付部門があるので女性が多いのが特徴的なくらいで特に不都合はなかったように思う。

「…総務課はこの会社の噂話の源と言われているのよ。会社の顔とも言われる受付はじめ、情報通な女性が集まっているからね。…今井さん、貴方危ないかもしれないわ。」

「へ?私?」

思っても見ない山辺の指摘に由梨は思わず間抜けな声をあげる。
 けれどその隣で天川も頷いた。
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