続・政略結婚は純愛のように
山辺と天川がくすくすと笑うのを不思議そうに見つめながら由梨は言った。
 忘年会の課の組み合わせに何か意味があるなんて思ってもみなかった。
 けれどよく考えてみれば、あの頃の由梨は何に対しても興味を持っていなかったように思う。

「忘年会は、他の課の人と親しくなる一年に一度のチャンスだからね。営業部の社員の中には今年こそは秘書課と組みたいと思っていた人が多いはずよ。"秘書課の天使"とお近づきになるために…。」

由梨は、まさか!と声をあげる。
 自分が"秘書課の天使"などと呼ばれていたことも信じられないけれど、そんなふうに言われていたなんてもっと信じられない。

「企画課の男性陣も毎年嘆いていましたよ。また、今年も外れたぁーって。社長と今井さんが結婚したときは、社長の陰謀説が流れましたよね。やっぱりあれは今井さんを男性社員から守るための…。」

「そ、そ、そんなことあるはずないじゃないですか!」

思わず由梨は大きな声で反論してしまう。

「く、く、くじ引きかなんかですよっ!絶対っ!」

由梨は耳まで赤くして主張する。
 けれど目の前の二人はニヤニヤとするばかりである。

「いや、社長の陰謀だろう。」

突然きっぱりと言い切る声が聞こえて、三人は少しびっくりして黒瀬の席を見た。
 黒瀬が自ら雑談に入ってくるのは非常に珍しいことだが、内容が会社のゴシップ的なことなら尚更だ。
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