続・政略結婚は純愛のように
 由梨はまた声をあげる。
 昼間由梨はみんなにそんなことはありえないと声を張り上げて主張したのに。

「由梨、俺は初めから君が好きだったと言っただろう?営業部の社員が君を狙っているとわかっていて、みすみすそいつらに君に近づくチャンスをやると思うか?」

 開き直ったように信じられないことを言う隆之を由梨は呆れたように見つめた。
 時々妙に子供っぽいことを言う彼は、本当に何百人もの社員を率いてまもなくこの地の財界トップに立とうとするあの加賀隆之と同一人物なのだろうか。

「由梨。」

 言葉を失っている由梨の両肩を掴んで隆之はよく聞けとばかりに由梨を見つめた。

「俺は多くの社員とその家族のために全てを捧げる覚悟でいるつもりだ。」

 由梨は頷く。
 それは由梨でなくとも社員であれば皆知っていることだ。

「けれどそれと、由梨のことは別だ。言っただろう?俺は由梨に出会えて初めて女性を愛おしく思う気持ちを知ったんだ。由梨を守るためなら何でもするさ。けれど言っておくが俺は強制はしていない、あくまで人事部長にアドバイスをしただけだ。…それに今年からは何も言っていない。」
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