続・政略結婚は純愛のように
 なんてことだ。
 社長からのアドバイスを無視できる人事部長がどこにいるのだろう。
 何て大人げない…。

「…黒瀬主任の言うとおりだったなんて。」

由梨は思わず呟いた。
 あの男ならやりかねないと言った黒瀬の笑みを思い出しながら。
 そんな小さな由梨の呟きを隆之は聞き逃さなかった。

「久しぶりに帰った俺の前であの男の名前を出すとは…いい度胸だな由梨。」

隆之の瞳に不穏なものが浮かんだのを見て由梨は慌てて口をつぐむ。
 確かにあのエレベーター前での二人のやりとりを思い出すと不用意だったかもしれない。
 でも由梨に男性社員を近づけたくないという理由だけで伝家の宝刀である"社長のアドバイス"を使ってしまう彼に言われたくないという気もした。
 言葉には出さなかったけれど。
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