続・政略結婚は純愛のように
陰口といっても開き直って聞いてみれば案外邪気のないものなのかもしれない。
けれどすぐに耳元で"笑ったな、覚えてろよ"という囁きが聞こえて、後ろを振り返る。
そこにいる思わぬ人物に由梨は思わず声をあげそうになってしまい慌てて口を押さえた。
隣の山辺が気まずそうに目を逸らした。
その間も廊下の向こうでは無責任な噂話が続いている。
「でもさー、私は興味ないですよ、ってフリをしてあっさり結婚しちゃうんだもん。許せないわ。そういう子が本当は一番油断ならないって今回のことでよくわかったわよね!」
「ほんと、ほんと、きっと仕事でお近づきになれる立場を利用して自分に有利になるようにしたのよ!ずるいわ!」
そう言って彼女たちが地団駄を踏んだその時、隆之が由梨と山辺を追い越して彼女たちの方へ颯爽と歩いていった。
「それ、黒瀬くんにも言われたよ」
よく通る張りのある声に一斉に振り返った彼女たちはぎょっとして目を向いている。
当然だ。
今の話を一番聞かれたくない人物に聞かれてしまったのだから。
しかも隆之の後ろには慌てて彼を止めようとして失敗した由梨までいる始末だ。
そんな気まずい空気をものともせず隆之は言葉を続ける。
「仕事上の立場を利用して、その気のないフリをしながら部下に迫った最低な社長だって」
けれどすぐに耳元で"笑ったな、覚えてろよ"という囁きが聞こえて、後ろを振り返る。
そこにいる思わぬ人物に由梨は思わず声をあげそうになってしまい慌てて口を押さえた。
隣の山辺が気まずそうに目を逸らした。
その間も廊下の向こうでは無責任な噂話が続いている。
「でもさー、私は興味ないですよ、ってフリをしてあっさり結婚しちゃうんだもん。許せないわ。そういう子が本当は一番油断ならないって今回のことでよくわかったわよね!」
「ほんと、ほんと、きっと仕事でお近づきになれる立場を利用して自分に有利になるようにしたのよ!ずるいわ!」
そう言って彼女たちが地団駄を踏んだその時、隆之が由梨と山辺を追い越して彼女たちの方へ颯爽と歩いていった。
「それ、黒瀬くんにも言われたよ」
よく通る張りのある声に一斉に振り返った彼女たちはぎょっとして目を向いている。
当然だ。
今の話を一番聞かれたくない人物に聞かれてしまったのだから。
しかも隆之の後ろには慌てて彼を止めようとして失敗した由梨までいる始末だ。
そんな気まずい空気をものともせず隆之は言葉を続ける。
「仕事上の立場を利用して、その気のないフリをしながら部下に迫った最低な社長だって」