続・政略結婚は純愛のように
 腕を組んで微笑む隆之を唖然として彼女たちは見ている。
 えー黒瀬主任そんなこと言ったの~と呟く山辺を見て、思わず由梨は飛び出した。

「ちょっ…!社長、主任はそこまでは言ってません!」

 由梨は必死で隆之の腕を引っ張る。
 けれど隆之がそんなことで止まるはずもなかった。

「たしかに由梨が受け入れてくれなかったら、俺はセクハラで訴えられて今はここにいないかもしれないな」

そう言って軽快に笑う彼に時が止まっていた彼女たちの表情が少し緩んだ。
 隆之は大きな手で髪をかきあげた。
 仕事中はきちんとしている髪がぴんぴんと跳ねて彼の印象をいつもとは違う少しワイルドなものに変えてゆく。
 女性たちがそんな彼に釘付けになっているのが、由梨にもわかった。
そして隆之は一歩彼女たちに近づくと大きな背を屈めて視線を合わせる。
 そして優しく彼女たちに語りかけた。

「でもまぁ最終的にはうまくいったんだし…許してもらえないだろうか」

酔っていたとはいえ無防備に陰口を言ってそれを聞かれてしまった彼女たちは皆顔を赤くしてこくこくと頷いた。
 頷くしかないだろう。
 由梨のことを言っていたのにそれを隆之のことと勝手にすり替えられたうえ、社長から許してくれなんて言われたのだから。
 聞かなかったフリをしてくれればいいのにと由梨は隆之を睨んだ。

「ありがとう」
< 169 / 182 >

この作品をシェア

pagetop