続・政略結婚は純愛のように
山辺は涙を吹きながら隆之と由梨を見た。

「黙って見てられなかったのよ、ふふふ。それにしても、さすが社長。あの返しはなかなか…ふふふ」

さすがの隆之も山辺だけならともかく、後の二人にまで見られていたことは予想外だったようだ。
 まいったなと言って頭をかいている。

「でも社長、僕は"最低な社長"とまでは言ってませんからね。」

 黒瀬がまだ笑いを含んだまま一応というように釘をさす。

「…そうだったかな。でもそういうニュアンスに聞こえたが。」

隆之は首をひねる。

「まぁ、そういうニュアンスではありましたが。まったく、社長にはかないませんね。会社のピンチを危なげなく支えてくれたうえ、より良い道へと導いてくれる敏腕ぶりを見せて頂けたかと思うと、今井さんのことに関してはひどく大人気なかったりする。…まぁ、それがあなたの魅力なのかもしれません」

黒瀬はそう言ってまだ笑いから脱出できていない天川と山辺の背中を押した。

「さぁ、会場へ戻ろう。このことは他言無用だ。…少なくとも我々は」

残された由梨は、もうっと言って隆之の腕を軽く叩いた。
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