続・政略結婚は純愛のように
「黒瀬は…前はもっと寡黙で何を考えているのかわからん奴だったんだが。ここんとこは、一皮剥けたようだな。…全く、お前の人たらしぶりには頭が下がるよ」

陽二が砕けた言葉を隆之にかける。
 隆之は何のことだ、と言って笑った。
 由梨はそんな二人を不思議な気持ちで見つめていた。
 隆之と陽二が幼なじみであることは知っていたが、ここまで砕けた会話をしているのを見たことがなかったからだ。
 じっと見つめる由梨に気がついた陽二は由梨に微笑みかける。

「困った奴で申し訳ないが、末永く隆之を頼むよ、今井さん。嫌味なくらい有能な奴だがもはや今井さんがいないとダメらしいから」

茶化したように言う陽二を隆之は嫌そうに睨んだが何も言わなかった。

「課長、そんな…」

由梨は上司である陽二が急に隆之の友人としての顔を見せたことに戸惑い、何と答えていいか分からない。
 陽二はそんな由梨には頓着せずに両腕をあげて伸びの姿勢をとった。

「さっ、黒瀬も追い払ったことだし、俺もその辺を見てこよう。…今井さん、しばらく社長のお守りをよろしく。なにしろ、こいつは立ってるだけで女性を引き寄せる性質があるからね。…しっかりと見張ってて」

実は隆之に負けずとも劣らない甘いマスクの陽二ににっこりと微笑まれて、思わずどきりとしてしまった由梨だったが腕をぐいっと引っ張られて隆之に引き寄せられた。

「い、いってらっしゃいませ」
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