続・政略結婚は純愛のように
「今日はこのままゆっくりするといい。」
大きな手が由梨の頭を撫でる。
そのなんとも言えない優しい感触に由梨はうっとりと目を閉じた。
もうほとんど記憶にない母を思い出すと言ったら彼は呆れるだろうか。
「久しぶりに土日のどちらも休みなんだ。明日はどこかへ行こうか。」
思いがけない隆之の言葉に、再び夢の中へ行きそうになっていた由梨は目を開いた。
「本当ですか?」
土曜日と日曜日連続で隆之の休みが取れるなんて結婚してから初めてのことではないだろうか。
今井コンツェルン北部支社の社長という肩書だけではなく、この地方に沢山ある加賀グループを取りまとめる加賀ホールディングスの取締役としての顔も持つ彼は普段から多忙を極める。
土日のどちらもが空いているなんて滅多にないことなのに、寝坊してしまった自分が恨めしい。