続・政略結婚は純愛のように
由梨が呟くように言った時には陽二の背中は人だかりに消えつつあった。
それを見計らったように隆之は由梨の手を取って自身の背中で隠した。
側から見ると上司と部下が並んでいるようにしか見えないだろうが、互いの手は指を絡めあって繋がっている。
「社長…だめです、離して下さい」
小声での由梨の懇願は隆之の耳に届いているはずなのにそれを聞き入れてくれる気は全くないようだ。
「由梨、よくがんばったね」
突然、隆之が夫であり元上司でもある顔で言った。
「正直…、いや由梨ならがんばれるだろうとは思っていたけれど、ここまでとは思わなかった。本当によくやった。やっぱり君はうちの会社になくてはならない社員だ」
隆之の力強い言葉が由梨を貫いて胸が熱くなった。
「あ、ありがとうございます…。でもまだ…微力すぎて…」
由梨は頬を染めてかぶりを振る。
思わず涙が出そうになってしまった。
隆之はいつも社員を真っ直ぐな言葉で褒める。
そういえば秘書課にいた時も何度か同じようなことがあったけれど、あの頃は自分は創業者一族だから気を遣われているのかもしれないという卑屈な気持ちが邪魔をして素直に受け止められていなかった。
けれど今ならわかる。
隆之は心の底からそう思ってくれている。
そういう人なのだ。
それを見計らったように隆之は由梨の手を取って自身の背中で隠した。
側から見ると上司と部下が並んでいるようにしか見えないだろうが、互いの手は指を絡めあって繋がっている。
「社長…だめです、離して下さい」
小声での由梨の懇願は隆之の耳に届いているはずなのにそれを聞き入れてくれる気は全くないようだ。
「由梨、よくがんばったね」
突然、隆之が夫であり元上司でもある顔で言った。
「正直…、いや由梨ならがんばれるだろうとは思っていたけれど、ここまでとは思わなかった。本当によくやった。やっぱり君はうちの会社になくてはならない社員だ」
隆之の力強い言葉が由梨を貫いて胸が熱くなった。
「あ、ありがとうございます…。でもまだ…微力すぎて…」
由梨は頬を染めてかぶりを振る。
思わず涙が出そうになってしまった。
隆之はいつも社員を真っ直ぐな言葉で褒める。
そういえば秘書課にいた時も何度か同じようなことがあったけれど、あの頃は自分は創業者一族だから気を遣われているのかもしれないという卑屈な気持ちが邪魔をして素直に受け止められていなかった。
けれど今ならわかる。
隆之は心の底からそう思ってくれている。
そういう人なのだ。