続・政略結婚は純愛のように
「いやよくやったよ。フードコートも大盛況じゃないか」

隆之は客で賑わうフードコートを眩しそうに見た。

「異動の時に話した"君が社長の妻であることについての不都合"は杞憂に終わったな。企画課は君をすんなり受け入れたどころか今となってはアシスタントを終えたら欲しいチームが複数あって、取り合いまでしてるそうだ」

「そんな…」

由梨は首を振った。

「企画課の皆さんが良い方ばかりだからです。黒瀬主任のおっしゃるとおりチームワークが良くて…」

隆之が握った手に力を入れた。

「それでも、それは君ががんばったからだ。…由梨、俺は君が誇らしいよ」

「た、隆之さんっ…!」

由梨は思わず仕事中だと言うことも忘れて声をあげてしまう。

「誇らしくて、愛おしい」

隆之のアーモンド色の瞳が都会の街に沈みゆく夕陽を映すように燃えている。

「初めて会ったあの時から、俺は君を妻にすると心のどこかで決めたんだ。それでその機会をずっと待っていたんだけれど…意外と君は手強かったな…。正直どうすれば良いんだろうと途方に暮れるときもあった。…君を前にするとそれまで経験したことのない気持ちになることが多いからね。…それでも由梨、俺は心から思う。君を妻にして良かった。ここにいる人達みんなに大声で自慢したいくらいだ。俺の妻はここにいる由梨なんだって」

「隆之さん…」
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