続・政略結婚は純愛のように
突然の話に少し唖然とする由梨だが、一方で胸は高まった。
 普通の社員は、アシスタントを経てそれぞれの分野で活躍するために一歩一歩、ステップを上がってゆく。
 由梨は特殊な立場からそれは望めないと思っていたからだ。
 そもそも今井コンツェルンにしても加賀グループにしても入社するのには高い能力が必要なはずで、創業者一族だからといって途中入社を許された由梨は他の社員とは能力も違うはずだ。
 そんな由梨でも次のステップに進めるのだと思うと素直に嬉しい。

「…異動という話ですか。」

思わず由梨は聞いた。
 逸る気持ちがそうさせてしまう。
 隆之は力強く頷いた。

「そう。…それでここ最近蜂須賀とも相談していたんだ。もちろん、このまま秘書課所属で役員秘書という選択肢もあるとは思うんだが…。」

そこまで言うと隆之は手元に準備されていた資料を由梨には示した。
 来春東京の大手百貨店で行われる予定の物産展の企画だった。
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