続・政略結婚は純愛のように
「夜はどうしてるの?」

「半々です。お手伝いさんが作ってくれるのと私が作るのと…。」

夫の隆之は結婚前は屋敷で夕食をとることはほとんどなかったらしい。
 夜の会合や接待はしょっちゅうだし、社交的な彼には急な誘いも多い。
 彼の秘書でもある由梨は当然そういった事情を知っていたので結婚したからといってお手伝いの秋元に由梨の分だけ用意してくれというのは申し訳ないと思った。
 それに、由梨には密かな願いがあった。

 "夕食も自分で作りたい"

お手伝いさんが作ってくれるというと皆一様に羨ましがるが、そんなにいいものでもない、と由梨は思う。
 今井家にいた頃は洋食好きの祖父や父に合わせた献立ばかりで好きなものは食べられなかった。
 そもそも今井の屋敷の使用人にとっては由梨などは意見を聞くに値しない人物だったのだ。
 出される物を黙って食べる。
 それが今までの由梨の夕食だった。
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