続・政略結婚は純愛のように
「同期でしょ。変に気を使うのはやめて。課長は、今井さんが社長の奥さんだというのは忘れろって言うけど、それなら貴方も同じように過剰に周りに気を遣うのをやめるべきだわ。同期なのに今井さんに敬語を使われたら、まるで私がアゴで使ってるみたいじゃない。」
創業者一族という枠で入社した自分にも皆と同じように同期という言葉を使ってもらえることを由梨は嬉しく思う。
さらに希は、"それでも課では先輩にあたるのだから"と言う由梨の意見を笑い飛ばした。
「今井さんだって秘書課でキャリアを積んだんでしょう?内容は違っても仕事は仕事よ、それともキャリアにならないようないい加減な仕事をしてたのかしら?」
彼女の歯に絹着せぬ言い方はどこか長坂を彷彿とさせるものがあった。
一見きついことを言うように思える人物の方が裏表がなくて付き合いやすいことを由梨は今までの経験上知っている。
あまり意地は張らずに彼女のいう通りにすることにした。
企画課の仕事はハードで、由梨は隆之に言われたとおり彼の帰りを待つのはやめて先にベッドに入るようにした。
そして目を閉じたと思ったらあっという間に夢の中、そんな日が連日続いた。
それでも夜中になってから隆之がベッドの隣に入ってくる気配だけはしっかりと感じていて、その温もりにまた明日もがんばろうと思えるのだ。
由梨は今までの人生で一番と言っていいほどの充実感を感じていた。
そしてそのチャンスをくれたのが他でもない由梨の最愛の人だということにもこの上ない幸せを感じるのであった。