続・政略結婚は純愛のように
「呼び出してすまない。」

隆之が言うと、琥珀色の液体が入ったグラスを手にいいやと陽二が首を振った。

「お前と違って俺は独身だからな。いつでも大丈夫だ。」

隆之はいつものとバーテンダーに声をかけてから陽二の隣に座る。
 しかしそのまま、目の前にグラスが置かれても話を切り出せずに黙り込む。
 陽二がくっくっと笑った。

「らしくないじゃないか。いつもずばずば聞かれたくないことまで突っ込んでくるお前が。聞きたいことがあるなら言えよ。」

若いころは二人でよくつるんだものだが、互いに職を得てからは当然その機会は減った。
 それでも会社で顔を合わせることはしょっちゅうだし、時間が合えばこうやって飲みにも来る。
 けれど、わざわざ呼び出してまで飲もうというのは当然何が話があるからなのだ。

「お姫様の様子が知りたいんだろう?」

陽二の何もかもお見通しだという態度に隆之は憮然として頷く。
 こういう態度は、社長となってからは意識してしないように気をつけているが、陽二といるときは別だ。
 彼は社員である前に友人だ。

「逆に俺からも聞きたいが。家ではどうだ?疲れているだろう。」

「あぁ、相当に。だが充実感の方が優っているんじゃないかな。体の方はそのうち慣れてくるだろう。」

隆之はベッドで寝息をたてて眠るあどけない由梨の寝顔を思い出しながら言った。

「それで?お前は相手をしてもらえないから、苦情を言うために俺を呼んだのか?」

 陽二が笑いを堪えながら言う。
 隆之はそんな陽二をじろりと睨んでウイスキーを一口飲んだ。
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