続・政略結婚は純愛のように
「それにしても。」

バーテンダーに同じ酒をもう一度頼んでから陽二は隆之を面白そうに見た。

「お前が結婚を決めた時も相当驚いたが、こうやって妻の心配をするお前を見る日が来るとは。」

 隆之は舌打ちをした。
 由梨との結婚を決める前は、正直言って結婚に意義を見いだせずにした。
 女性との付き合いはそれなりに刺激的だったが、絶対に必要なものかどうかは疑問だったし、ましてや一人の女性と生涯をともにするなど想像もつかなかった。
 陽二とはそんな話をこのBARでもよくしたのだから、彼にはそう言われても仕方がないのだが。

「お前の愛妻家ぶりは噂になるくらいだからな。…でもそれを面白く思っていない連中もいるんだろう?」

 陽二の声が一段低くなった。
 隆之は眉を寄せて彼から視線を外した。
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