続・政略結婚は純愛のように
マリア登場
その日は朝からなんとなく社内が騒がしいような気がしていた。
エントランス辺り、エレベーター、お手洗いなど至るところで社員が固まってひそひせと囁きあっている。
そのどこかうきうきとした雰囲気に由梨は首を傾げながら出勤する。
理由は朝礼で判明した。
「おはようございます。みんなも知っての通り、今日は一課で重要なお客様をお迎えする予定です。」
蜂須賀陽二が課のメンバーを見渡して告げる。
彼のよく通る声に皆、耳を傾ける。
「東京のファッションブランド"ノリス"の社長がおみえになります。」
一課にも二課にも業務の内容柄、来客は珍しいことではない。
それを朝礼でわざわざ確認するのだから、よほどの重要人物なのだと由梨は思った。
「"ノリス"の社長は言わずと知れた…。」
そこまで言った陽二が一旦言葉を切って由梨をちらりと見た、…ような気がして由梨は首を傾げた。
「言わずと知れた、モデルの葉山マリアさんだ。」
陽二の言葉に何人かが、頷いたりヒソヒソと囁き合ったりしている。
驚いている様子の者はいない。
周知の事実なのであろう。
けれど、由梨にとっては初耳だった。
由梨はもともとファッションにも芸能情報にも詳しくはない。
もっとも同じ課の取引先なのだから知っているべきだとも思うが、移動してからの由梨は目の前の仕事に取り組むだけで精一杯で隣の一課のことまでは把握できていなかった。
なるほど、取引先の社長というだけではなく芸能人である人物が来ることに対して社内が浮き足立っているのかと由梨は納得した。
東京では芸能人など珍しくはないが、ここではそんなことは滅多にない。
朝からのちょっとした騒ぎくらいは仕方がないだろう。
エントランス辺り、エレベーター、お手洗いなど至るところで社員が固まってひそひせと囁きあっている。
そのどこかうきうきとした雰囲気に由梨は首を傾げながら出勤する。
理由は朝礼で判明した。
「おはようございます。みんなも知っての通り、今日は一課で重要なお客様をお迎えする予定です。」
蜂須賀陽二が課のメンバーを見渡して告げる。
彼のよく通る声に皆、耳を傾ける。
「東京のファッションブランド"ノリス"の社長がおみえになります。」
一課にも二課にも業務の内容柄、来客は珍しいことではない。
それを朝礼でわざわざ確認するのだから、よほどの重要人物なのだと由梨は思った。
「"ノリス"の社長は言わずと知れた…。」
そこまで言った陽二が一旦言葉を切って由梨をちらりと見た、…ような気がして由梨は首を傾げた。
「言わずと知れた、モデルの葉山マリアさんだ。」
陽二の言葉に何人かが、頷いたりヒソヒソと囁き合ったりしている。
驚いている様子の者はいない。
周知の事実なのであろう。
けれど、由梨にとっては初耳だった。
由梨はもともとファッションにも芸能情報にも詳しくはない。
もっとも同じ課の取引先なのだから知っているべきだとも思うが、移動してからの由梨は目の前の仕事に取り組むだけで精一杯で隣の一課のことまでは把握できていなかった。
なるほど、取引先の社長というだけではなく芸能人である人物が来ることに対して社内が浮き足立っているのかと由梨は納得した。
東京では芸能人など珍しくはないが、ここではそんなことは滅多にない。
朝からのちょっとした騒ぎくらいは仕方がないだろう。