続・政略結婚は純愛のように
 けれど。
 モデルのマリア…?
 由梨の胸がきゅっと痛む。
 葉山マリアとはあのマリアではないだろうか。
 従姉妹たちの話に出てきた、隆之のかつての恋人の…。

「葉山さんはモデルとしてご活躍ではありますが、今日は"ノリス"の社長として来られるのです。失礼のないように。…予定では昼頃到着の便で空港にお着になる。社長がお出迎えされて、社への到着が約一時間後、それから夕方まで会議だ。」

陽二がそう告げて朝礼は解散になった。
 由梨は自分のデスクに戻る。
 けれどすぐには業務に取り掛かることができなかった。
 従姉妹の祥子は派手好きでどこぞのモデルやら芸能人と交流があることを自慢としていた。
 葉山マリアは学生時代の友人でそのマリアと隆之が付き合っていたことを嫌味のように言われたのが記憶に新しい。

"加賀さんには、マリアみたいな大人の女性じゃないと"

"マリアみたいな派手な女と付き合ってた男が由梨で満足できるわけがない"

 また従姉妹たちの言葉が頭に浮かぶ。
 由梨は慌てて首を振った。
 隆之と本当の夫婦になれたあの夜に彼の過去は気にしないと決心したあの気持ちがガラガラと崩れていくようで怖かった。
 沢山いる隆之の過去の女性の中で由梨が唯一顔を知っている女性、葉山マリア。
 その彼女が、美しいだけではなくて事業家としても成功しているなんて。
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