続・政略結婚は純愛のように
「…どうしたの。顔色悪いよ。」

 隣の席の天川が心配そうに由梨を覗き込んだ。
 ハッとして由梨は顔をあげる。

「医務室行く…?」

天川だけではなく、斜向かいにいる黒瀬も眉を寄せて由梨を見ている。

「今日は一課が忙しい分、こっちはサポートが中心になるだろう。特に急ぎの案件はないから、帰ってもいいんだぞ。」

黒瀬にしても天川にしても、厳しいことは確かだが、理不尽なことや無理を強いることはしない。
 由梨にはそれがありがたい。

「大丈夫です。ちょっと寝不足なだけで…。」

由梨は慌てて答える。

「…ちょうど疲れが出る頃だ。倒れられる方が困る。無理をするなよ。」

そう告げて黒瀬は業務に取り掛かる。
 由梨もメールを開いた。

「主任があんな風に言うなんて珍しいのよ。」

天川が由梨に囁く。

「企画課のブリザードって言われているんだから。」

そう言う天川は、"企画課の雪女"と言われているが。

「ま、休めるときに休みな。」

 天川はそう言って外出して行った。
 お礼を言って由梨は彼女を送り出す。
 もやもやとした気持ちを抱えたまま由梨の一日が始まった。
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