続・政略結婚は純愛のように
　ひどい言葉だとは思うけれど、当然の感想だとも思う。
　すぐ前にいても気がつかないほど地味で存在感のない由梨が隆之の相手とはだれも納得がいっていないのだ。
　美しくもなく豊満な体でもない、ましてやマリアのように社会的成功を収めているわけでもない。
　由梨は急に自分がちっぽけでつまらない存在なのだということを思い出した。
　隆之と結婚し、彼の大きな愛に包まれてまるで成長したような気持ちになっていたけれど、それはなにもかも幻想で、所詮は虎の威を借る狐でしかない…。

「…い。…おいっ！」

肩を叩かれて由梨は顔をあげた。
いつのまにか、マリアも隆之もビルへ入ってゆき、集まっていた人たちも解散して皆ぞろぞろとビルへ戻っていた。

「…大丈夫か。」

黒瀬が肩に手を置いたまま由梨を覗き込む。
　明らかにさっきのことで動揺している由梨を心配そうに見ている。

「…大丈夫です。」

由梨は黒瀬の視線から避けるように俯いて歩き出した。
　泣いてしまいそうだった。
　隆之に自分はふさわしくないと結婚に踏み切れなかったあの時の自分に戻ってしまったかのようだ。
　いや、本当は１ミリだって進んでいなかったのかもしれない。
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