続・政略結婚は純愛のように

　一同が企画課へ移動して会議が始まる頃に由梨もエントランスから戻ってくるのが見えた。
　顔色が悪い。
　隆之は眉をひそめた。
　やはり、ここ最近の環境の変化への疲れがあるのだろう。
　やはり週末は家でゆっくりさせようと心の中で決めたとき、黒瀬が由梨に近づくのが見えた。
　陽二が会議の開始を呼びかける。
　隆之は誰にも気づかれないように二人を目で追った。
　黒瀬と由梨は二人してミーティングルームへ消えてゆく。
　ドアの前の＂使用中＂のプレートが隆之の心をかき乱した。
　冷静になって考えれば黒瀬は由梨の上司なのだから、ちょっとした打ち合わせなど珍しくもないだろう。
　けれど二人は資料も筆記用具も持たずに部屋にこもっている。
　個人的な話をしているのではないだろうなという邪な気持ちが隆之の中で暴れ始める。
　仕事だろうとなんだろうと男と二人きりになることなど許さないと、もう一人の自分が言う。