続・政略結婚は純愛のように
マリアが驚くのも無理はない。
 妻を秘書にしている社長も珍しいがさらにそこから一般の部署へ異動になるなど、大企業では聞いたことがない。
 ましてや旧家加賀家の嫁ならば仕事はやめて家庭に入れと言われてもおかしくはないのだ。
 異例と言われればそうだろうが、そもそも夫婦としての始まりも普通とは違ったのだから、隆之としてはどのような形でも気にはならない。
 けれど、そうすることで社内で不快な思いをする者がいるならば、申し訳ないと思う。
 隆之は最中を食べる一同を見回した。

「…企画課の皆には、少々窮屈な思いをさせてしまって申し訳ない。彼女の希望もあって仕事は続けさせてもらってはいるが、何かあれば私に言ってくれ。善処する。」

改まって言う隆之に一瞬その場が静まり返る。
 しばらくしてその内の一人の女性社員が思い切ったように口を開いた。

「社長、あの…。大丈夫です。もちろん初めは戸惑いましたけれど、今井さんは気持ちのいい方ですし。…まだ来られて一ヶ月くらいですが、もう皆…社長の奥さんだからやりにくいなんて思っていないと思います。」

 彼女の言葉に何人かが頷いている。

「そうか、ありがとう。」
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