続・政略結婚は純愛のように
 それからも休憩を挟みながら、結局会議が終わったのは、定時を過ぎた頃だった。
 冬の始まりの日は短く、もう外は薄暗い。
 二課の方を見るとほとんど人はいなかった。
 北部支社に隆之が来てからは、日中忙しいのは仕方がないにしても無用な残業はしないよう徹底させている。
 特に今日は金曜日ということもあって、残っている社員も皆帰り支度をしている。
 由梨ももう帰ったようだった。
 一課のプロジェクトメンバーと隆之はこれからマリアの接待で夜の街へ繰り出す。
 隆之は途中まで行きかけてふと思いつき、忘れ物をしたフリをして企画課へ戻った。
 なにか意図があったわけではないけれど、由梨の机を見ておきたいと思った。
 キチンと片付けられたデスクのうえのペンタテに、どこか出先でもらったであろうキャラクターのボールペンがささっている。
 気に入っているかどうかはともかくもらった物を律儀に使うところが彼女らしいと、笑みを漏らしたときお疲れ様ですと声をかけられて隆之は振り返った。
 黒瀬だった。
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