続・政略結婚は純愛のように
「…私との結婚以前に、創業者一族でもあるからな。」
もっともらしいことを言って隆之は黒瀬から視線を外した。
黒瀬も頓着はせずにまぁそうですよねと言った。
けれどそれとは別に何か言いたげに視線を彷徨わせた。
隆之の脳裏に昼間に見たエントランスの出来事が浮かぶ。
「今井さんは…。」
迷うようなそぶりがありながらも黒瀬は口を開いた。
「今井さんは強い。社長の妻なのになぜ企画課にいるのだというような雑音であれば自らの力で跳ね返すでしょう。現に、一か月たって企画課の中の人間でそのようなことを言う者はもういない。」
隆之は頷いた。
「けれど…。社長が…素晴らしい人物であるがゆえの雑音についてはどうでしょう。もっともこれについては、以前から多少はあったことなのでしょう。ただ彼女が企画に来たことで直接耳にする機会が増えたんじゃないですか。」
やはりあのエントランスでのことを言っているのだ。
あの時、黒瀬が由梨を庇うように後ろの社員を睨んだのは、彼女たちが由梨に対して良からぬことを言ったのだろうと隆之は思った。
隆之と由梨が結婚したことについて中傷するものがいるという情報は秘書課の女性陣から聞いたことがある。
けれど当然のことかもしれないが、それを直接隆之が耳にすることはなかった。
もっともらしいことを言って隆之は黒瀬から視線を外した。
黒瀬も頓着はせずにまぁそうですよねと言った。
けれどそれとは別に何か言いたげに視線を彷徨わせた。
隆之の脳裏に昼間に見たエントランスの出来事が浮かぶ。
「今井さんは…。」
迷うようなそぶりがありながらも黒瀬は口を開いた。
「今井さんは強い。社長の妻なのになぜ企画課にいるのだというような雑音であれば自らの力で跳ね返すでしょう。現に、一か月たって企画課の中の人間でそのようなことを言う者はもういない。」
隆之は頷いた。
「けれど…。社長が…素晴らしい人物であるがゆえの雑音についてはどうでしょう。もっともこれについては、以前から多少はあったことなのでしょう。ただ彼女が企画に来たことで直接耳にする機会が増えたんじゃないですか。」
やはりあのエントランスでのことを言っているのだ。
あの時、黒瀬が由梨を庇うように後ろの社員を睨んだのは、彼女たちが由梨に対して良からぬことを言ったのだろうと隆之は思った。
隆之と由梨が結婚したことについて中傷するものがいるという情報は秘書課の女性陣から聞いたことがある。
けれど当然のことかもしれないが、それを直接隆之が耳にすることはなかった。