続・政略結婚は純愛のように
「あ、…お疲れ様です」

 三人は少し驚いて隆之を見る。
 隆之が上着を着ているからだ。
 彼は外出時以外は大抵上着を脱いでいる。
 隆之のスケジュールは皆当然把握していて今日は昼を過ぎてからの外出を予定していた。

「社長、お出かけは14時からでは?」

 尋ねたのは長坂だ。

「うん。でも少し早く出て支店によろうかと思ってね。…蜂須賀?」

言われるより早く蜂須賀はついて出る準備をしている。
 隆之の秘書は長坂と蜂須賀だが、主に蜂須賀が外へ付き添い、社内事項は長坂が担当している。
 外出時にイレギュラーに思いついた先を回るのは隆之の癖みたいなものだ。
 特になんの意図もなく行った先で少しの間話をするくらいなのだが、これが意外と好評で、社員の士気が上がる。
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