続・政略結婚は純愛のように
 ネオンの街を隆之の乗せた車が滑るように走る。
 高級車特有の少し硬い座り心地の良い後部座で隆之はため息をついた。
 黒瀬とのやりとりは隆之に予想以上のダメージを与えた。
 マリアをもてなす為の店についてからも隆之の脳裏にあの鋭い黒瀬の視線がいつまでもチラついていた。
 大企業の社長ともなれば、常に一つか二つはトラブルを抱えているものだ。
 だからといってそれによって目の前にある他の仕事が疎かになるはずもない。そういう自信が隆之にはあった。
 けれど、今日はそれがどうにもうまくいかなかった。
 周りの反応を見る限り大きな失態はしていないようだが、そんなに沢山飲んだわけでもないのに、酔いが回って辛かった。
 結局、二軒目を出たとこでマリアをなんとか陽二に任せて自宅まで車を走らせている。
 自己嫌悪と嫉妬、二つの感情がぐるぐると渦巻いて隆之を支配する。
 黒瀬の口ぶりからいくと彼はこの件に相当の怒りを感じているようだった。
 社長と一社員という立場を乗り越えて、隆之を"貴方"と呼びかけた。
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