続・政略結婚は純愛のように
 仕事はできるが冷淡で時に上司にも噛みつく少々やっかいな男とは聞いていたが彼が怒りを見せたのが由梨に関することだということに隆之はいいしれぬ不安を感じた。
 ミーティングルームへ二人して消える姿を見たときに彼のような男が由梨の初めの上司だったなら良かったのかもしれないと思ったけれど、それをまざまざと見せつけられた気分だった。
 あるいは彼のような男が由梨の夫だったら…?
 隆之は舌打ちをして頭をぐしゃぐしゃとかいた。
 どうも酔っ払っているせいで思考がまともではない。
 けれど黒瀬の言っていたことが本当なのであれば、由梨の夫が隆之でなければ由梨は辛い思いをしなくても良かったということになる。
 何があったのか、由梨に聞かなくては。
 そして辛い思いをさせたのであればすまないと抱きしめて、安心させてやりたい。
 どのような中傷かは知らないがそれに君が傷つく必要はないと。
 隆之はイライラとして車窓を睨む。
 ネオンはいつまでも隆之に付きまといなかなか離れてはくれない。
 早く由梨に会いたい。
 早く抱きしめたい。
 そんな思いで頭をいっぱいにして隆之は家路についた。
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